ついに、この日がやってきました。第6話は、私がこの旅でいちばん訪れたかった場所——プリトヴィッツェ湖群国立公園です。
第1話でも少し触れましたが、私がこの3ヵ国周遊の旅に出たそもそものきっかけは、テレビで見た、クロアチアのある湖の映像でした。エメラルドグリーンに輝く水、幾筋も流れ落ちる滝、みずみずしい森。その美しさに一目で心を奪われ、「いつか、絶対にこの目で見たい」と願い続けてきたのです。そしてその場所こそが、ここ、プリトヴィッツェでした。
念願の地に、ついに立つ
公園内のホテルを朝に出発し、いよいよ園内へ。晴れてはいましたが、朝はひんやりと冷えていて、フリースを着てちょうどいいくらい。澄んだ空気が、気持ちを引きしめてくれます。
プリトヴィッツェ湖群国立公園は、クロアチア最大の国立公園。大小16の湖と、90以上もの滝が連なり、1979年には世界自然遺産に登録されています。総面積は約295km²——東京23区がすっぽり入ってしまうほどの、広大な水と緑の楽園です。
そして、歩き始めてすぐに——私は胸がいっぱいになりました。テレビの画面ごしに何度も見た、あの風景が、今、目の前に広がっているのです。写真や映像では決して伝わらない、水の音、森の匂い、ひんやりとした空気。五感のすべてで、ずっと憧れた場所を感じている。「ああ、ついに来られたんだ」。そう思うと、じんわりと胸が熱くなりました。
水と緑に、ただただ癒されて
プリトヴィッツェの魅力は、なんといっても、その水の色。エメラルドグリーン、ターコイズブルー、深い藍色——光の加減や水深によって、さまざまに表情を変えます。どうしてこんなにも美しい色なのでしょう。
その秘密は、この一帯の地質にあります。石灰岩でできたこの土地では、水に炭酸カルシウムがたっぷり溶け込んでいます。それがトラバーチン(石灰華)という堤防を少しずつ作り、水をせき止めて、無数の湖と滝を生み出してきました。この堤防は、今もなお成長を続けているのだそうです。自然が、気の遠くなるような時間をかけて造り上げた、生きた芸術——それがプリトヴィッツェなのですね。

湖のほとりには、木でできた遊歩道(木道)が巡らされています。水面すれすれを歩くこの木道が、プリトヴィッツェの醍醐味。すぐ足元を清らかな水が流れ、あちこちで小さな滝がさらさらと音を立てています。無数の滝が流れ落ちる場所では、私はもう、ずっと立ち止まって眺めていたいくらいでした。


じつは、前日の夜に雨が降ったようで、この日は水量がたっぷり。おかげで滝はいつも以上に迫力満点でした。ただ、その分、木道が水浸しになっている場所もちらほら。足元に気をつけながら歩きました。これから行かれる方は、防水のスニーカーや滑りにくい靴があると安心ですよ。

幾筋もの滝と、園内最大の大滝
歩みを進めるたびに、次から次へと滝が現れます。木々の間から幾筋も流れ落ちるもの、岩肌を幾重にも伝うもの、エメラルドの淵にまっすぐ落ちるもの。ひとつとして同じ表情のものはありません。苔むした岩と、新緑と、白い水しぶき。そのすべてが調和して、まるで一枚の絵のようでした。

そして、この公園のハイライトが、園内最大の滝ヴェリキ・スラップ。「ヴェリキ・スラップ」とは、クロアチア語で「大滝」の意味です。その落差はなんと約78m。断崖から勢いよく流れ落ちる白い水の帯は、まさに圧巻の一言でした。周りの緑とのコントラストも美しく、この迫力は、やはり実際に目の前にしてこそ、だと思います。

澄んだ水の魚、可憐な花——小さな命にも出会って
プリトヴィッツェの水は、本当に澄んでいます。木道から水面をのぞき込むと、底までくっきりと見えて、魚たちが悠々と泳いでいるのがわかりました。人を恐れる様子もなく、ゆらゆらと群れをなして。この透明度こそが、この水がどれほど清らかかの何よりの証です。

足元の森にも、春の訪れが。草花に詳しいわけではないのですが、可憐な白いお花が、あちこちでひっそりと咲いていました。あまりに可愛らしくて、ついついたくさん写真を撮ってしまいました。大きな滝の迫力も素敵ですが、こうした小さな命との出会いもまた、プリトヴィッツェの魅力ですね。

ボートに揺られ、湖をわたる
園内の周遊には、徒歩の木道だけでなく、電動の遊覧ボートも使います。大きな湖をボートで静かにわたっていくひとときは、歩き疲れた体にうれしいひと休み。エンジン音も静かで、自然にやさしいボートです。水面をすべりながら、まわりの緑を眺めていると、心がすっと軽くなっていくようでした。

ハイキングと聞くと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、プリトヴィッツェのコースは、ハイキング初心者の私でも大丈夫でした。木道とボート、そして園内バスをうまく組み合わせているので、きつい山登りのような場面はありません。無理なく、自分のペースで、水と緑を満喫できます。老若男女、たくさんの人が思い思いに散策を楽しんでいました。
撮り忘れるほど夢中に。公園近くでの昼食
たっぷりと園内を歩いたあとは、お昼ごはん。この日は、公園の近くにある「RESTORAN ŽGANJER」というレストランでいただきました。1974年創業という、地元で長く愛されているお店のようです。

……ところが。お料理の写真が、一枚もないのです。看板はちゃんと撮っているのに(笑)。どうやら私は、プリトヴィッツェの絶景にすっかり夢中になって、お腹がすいた勢いで、お料理を撮るのをすっかり忘れて食べてしまったようなのです。我ながら、旅のあるあるというか……。でも、それだけこの日の景色に心を奪われていた、ということにしておいてください。お味はしっかり美味しくいただきましたよ。
夢が叶った一日
テレビの画面の中にあった憧れの風景の中を、自分の足で歩き、自分の目で見て、水の音を聞き、森の空気を吸う。長いあいだ願い続けた夢が、ついに叶った一日でした。
最初から最後まで、ただただ水と緑に癒されつづけた、忘れられない時間。「行きたい」と願って、本当に行動して、こうしてこの場所に立てた。その喜びを、私はこれからもずっと大切にしていきたいと思います。もし今、「いつか行ってみたいな」と憧れている場所があるなら——どうか、その気持ちを大切にしてください。夢は、叶います。
【最新情報】プリトヴィッツェ湖群国立公園
※以下は本記事執筆時点で調べた最新の情報です。私が訪れた2014年当時とは料金や状況が変わっています。おでかけ前に必ず公式サイト等でご確認ください。
- 通貨について:クロアチアは2023年にユーロを導入しました。私が訪れた2014年当時の入園料は100クーナ(kn)でしたが、現在はユーロ表示に変わり、料金も時期によって変動します。
- 入園券と入口:入口は「エントランス1」「エントランス2」の2か所。季節によって料金が変わり、夏のハイシーズンは事前予約(時間指定)が推奨されています。チケットには園内ボート・園内バスの利用が含まれます。
- 服装・靴:木道が濡れていることが多いので、防水で滑りにくい靴がおすすめ。標高が高く朝晩は冷えるので、羽織るもの(フリースなど)があると安心です。
- 所要時間とコース:見どころを効率よく回るいくつかのモデルコースが用意されています。上湖群は穏やかで優美、下湖群は大滝などダイナミック。歩く距離や時間でコースを選べます。
- ベストシーズン:新緑の春、水量豊かな初夏、紅葉の秋など、季節ごとに表情が変わります。私が訪れた5月は、新緑がとても美しい時期でした。
次回は、首都ザグレブと、帰国の途へ
念願のプリトヴィッツェで、夢が叶った6日目。この旅のいちばんの目的を果たし、私の心は満ち足りていました。次回はいよいよシリーズ最終話。クロアチアの首都ザグレブを訪れ、そして8日間の旅を終えて、帰国の途につきます。最後まで、どうぞお付き合いくださいね。
次回もどうぞ、私と一緒に旅を続けてくださいね。
クロアチア・スロベニア・ボスニア3ヵ国周遊ツアー シリーズ一覧
2014年5月、阪急トラピックスで訪れたクロアチア・スロベニア・ボスニアヘルツェゴビナ3ヵ国周遊の旅。全8回にわたってお届けします。
- 第1話|スロベニア・ブレッド湖と聖マリア教会
- 第2話|ポストイナ鍾乳洞とアドリア海の街オパティア
- 第3話|世界遺産の街シベニクとトロギール
- 第4話|スプリットとモスタル ― クロアチア&ボスニアの世界遺産
- 第5話|アドリア海の真珠・ドブロヴニク
- 第6話|念願のプリトヴィッツェ湖群国立公園(本記事)
- 第7話|首都ザグレブと帰国の途(近日公開)
- 【まとめ】クロアチア・スロベニア・ボスニア3ヵ国周遊ツアー8日間|ルート・費用・世界遺産6つの全記録(近日公開)

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