旅も5日目。この日訪れるのは、多くの人が「一生に一度は訪れたい」と憧れる、アドリア海の真珠・ドブロヴニクです。オレンジ色の屋根が連なる旧市街を、堅固な城壁がぐるりと囲み、目の前には紺碧のアドリア海。「魔女の宅急便」のモデルになった街とも噂される、あの絶景の世界へご案内します。
アドリア海の真珠、ドブロヴニクへ
ドブロヴニクは、クロアチア南端のアドリア海に面した要塞都市。中世にはラグーサ共和国という海洋都市国家の首都として、ヴェネツィアなどと肩を並べるほど栄えました。強大な国に囲まれながらも、巧みな外交で独立を守り抜いた、誇り高い街です。1979年には世界遺産に登録されています。
旧市街の玄関口となるのが、西側のピレ門。跳ね橋を渡り、堂々たる石造りの門をくぐると、いよいよ中世の世界へ足を踏み入れます。門の上には、街の守護聖人・聖ヴラホの像が、そっと私たちを見守っていました。

現地ガイドさんと歩く、旧市街さんぽ
ピレ門をくぐってすぐ、まあるいドームが目を引くのがオノフリオの大噴水。1440年に造られたこの噴水は、今も昔も、旅人ののどをうるおしてきました。当時のドブロヴニクは、上下水道が整った、ヨーロッパでも最先端の衛生都市だったのだそうです。

ここから旧市街のメインストリート、プラツァ通り(ストラドゥン通り)がまっすぐに延びています。大理石で舗装された道は、長い年月をかけて磨かれ、つやつやと光っていました。両側にはカフェやお店が軒を連ね、たくさんの人でにぎわっています。

この日は、現地のガイドさんが旧市街を案内してくださいました。おかげで、ただ歩くだけでは気づけない、たくさんの物語を知ることができました。
まず驚いたのが、クロアチアがネクタイ発祥の国だということ。17世紀、戦地へ向かうクロアチアの兵士たちが、恋人や母が無事を祈って首に巻いてくれた布を身につけていた。それをフランス王ルイ14世が気に入って真似したのが、ネクタイの始まりなのだそうです。ネクタイのフランス語「クラバット」は、もともと「クロアチア兵」を指す言葉だったのだとか。首元のおしゃれの原点が、大切な人の無事を願うお守りだったなんて——なんだか胸が温かくなる話でした。
ガイドさんは、街の見どころも次々に案内してくれます。バロック様式の華やかな聖ヴラホ教会、そして端正な佇まいの大聖堂。この街が海洋国家として栄えた、往時の豊かさが偲ばれます。


ルジャ広場に立つスポンザ宮殿と時計塔も見事でした。ゴシックとルネサンスが調和した優雅な建物で、かつては税関や造幣局として使われていたそうです。背後にはこのあと登るスルジ山も見えていました。

ヨーロッパで3番目に古い薬局と、一目惚れのピアス
ガイドさんが案内してくれた中でも、とりわけ心に残ったのがフランシスコ会修道院。ここには、なんと1317年に開設された、ヨーロッパで3番目に古い薬局があるのです。700年もの間、営業を続けているというから驚きです。今も薬草を使った化粧品などが売られていて、ひそかな人気なのだとか。歴史がそのまま生きている、そんな街なのですね。

そして旅の楽しみといえば、お買い物。私はこの街で、銀細工のピアスに一目惚れしてしまいました。繊細な模様が編み込まれた、コロンと丸いデザイン。クロアチアの伝統的な銀細工だそうで、迷わず購入。旅の記念に、自分へのちょっとしたご褒美です。それから、お友達へのお土産に海綿も買いました。アドリア海の恵みですね。

ガイドさんに導かれて路地に入ると、これがまた素敵なのです。石造りの建物にはさまれた細い階段道。黄色い椅子を並べたカフェ、窓辺に揺れる洗濯物、鉢植えの緑。観光客でにぎわう大通りとはまた違う、人々の暮らしの息づかいが感じられて、いつまでも歩いていたくなりました。

スルジ山から見下ろす、真珠の街
旧市街の背後にそびえるのが、標高約412mのスルジ山。ここの展望台からの眺めが、それはもう格別でした。
眼下に広がるのは、アドリア海に浮かぶ「真珠の街」。オレンジ色の屋根がびっしりと連なり、それを堅固な城壁がぐるりと囲んでいます。海の青、屋根のオレンジ、その鮮やかなコントラストの美しさに、しばらく言葉も出ませんでした。「アドリア海の真珠」——この街をそう呼んだ人の気持ちが、心の底から分かった瞬間でした。

城壁の上を歩いて、オレンジの屋根の海へ
ドブロヴニク観光のハイライトといえば、やはり城壁巡り。旧市街をぐるりと囲むこの城壁は、全長約2km。13世紀から16世紀にかけて築かれた、街を守る堅固な砦です。
私も城壁の上を歩いてみました。ただ、自由時間があまり多くなかったので、今回は街側をぐるりと半周ほど。それでも、上から見下ろすオレンジ色の屋根の眺めは、期待をはるかに超える美しさでした。大小さまざまな屋根が折り重なり、その向こうにはきらめくアドリア海。ぽっかりと浮かぶロクルム島も見えました。一枚の絵のような光景に、何度もカメラを向けてしまいました。


城壁を降りて、旧港のほうへ。かつて多くの交易船でにぎわった港には、今は観光ボートやヨットが浮かんでいます。この街から船に乗って、島々をめぐるツアーもあるのだそう。3時間の滞在では、とても回りきれませんでした。もし次に訪れることができたら、今度はぜひ、船の上からこの美しい街を眺めてみたい。そんな新しい夢もできました。

美しい街に隠された、もうひとつの物語
これほどまでに美しく、平和なドブロヴニク。けれどこの街にもまた、モスタルと同じように、悲しい歴史が刻まれていました。
旧市街のある壁に、こんな写真が展示されていました。「NE ZABORAVI! / LEST WE FORGET!(忘れるな!)」——1991年、ユーゴスラビア内戦のさなか、この美しい旧市街もまた、砲撃を受けて炎に包まれたのです。あのオレンジ色の屋根の多くも、このとき破壊されてしまいました。

けれど、この街の人々はあきらめませんでした。戦争が終わると、地元の人たちの手で、街は少しずつ、けれど確実に、元の美しい姿へと修復されていったのです。世界遺産の危機遺産リストに載ってしまったこの街は、その努力が実り、1998年にはリストから外れました。
今、私が「美しい」と見とれていたあのオレンジ色の屋根は、人々が街を愛し、守り、よみがえらせた証でもあったのです。モスタルの橋と同じように、ここにもまた、平和への深い祈りが込められていました。美しさの奥にある物語を知って、この街がいっそう、かけがえのないものに思えました。
ヨットハーバーを望むレストランで昼食
観光のあとは、お待ちかねの昼食です。この日は、ヨットハーバーを望む素敵なレストランでいただきました。まずは温かい赤いスープ、そしてメインは、ムール貝をのせたトマトリゾット。魚介の旨みがぎゅっと詰まった、アドリア海ならではのお味でした。最後はベリーソースのかかったケーキで、幸せな締めくくり。美しい景色を眺めながらのお食事は、格別のごちそうです。



【最新情報】ドブロヴニク観光
※以下は本記事執筆時点で調べた最新の情報です。私が訪れた2014年当時とは料金や状況が変わっています。おでかけ前に必ず公式サイト等でご確認ください。
- 通貨について:クロアチアは2023年にユーロを導入しました。私が訪れた2014年当時はクーナ(kn)で、城壁の入場は100knでしたが、現在はユーロ表示に変わっています。城壁の入場料は年々値上がりしており、事前にご確認を。
- 城壁巡り:全長約2km、一周は南回り・北回り合わせて2〜3時間ほど。日陰が少なく階段も多いので、夏は帽子・水分・歩きやすい靴が必須です。朝いちばんか夕方が比較的すいています。
- スルジ山:ケーブルカー(ロープウェイ)で山頂の展望台へ上れます。旧市街とアドリア海を一望できる絶景スポットです。
- 混雑:クルーズ船が寄港する日中は大変混雑します。近年はオーバーツーリズム対策で入場者数の管理も行われています。
- ボートツアー:旧港から、近隣の島々をめぐるボートツアーが出ています。海から城壁を眺めるのもおすすめです。
次回はいよいよ、念願のプリトヴィッツェへ
アドリア海の真珠・ドブロヴニクで、美しさと歴史の重みの両方を胸に刻んだ5日目。そして次回は、いよいよ——この旅でいちばん訪れたかった場所、プリトヴィッツェ湖群国立公園です。テレビで見て以来、ずっと憧れていた、あの水と緑の楽園。念願かなっての訪問を、たっぷりとお届けします。
次回もどうぞ、私と一緒に旅を続けてくださいね。
クロアチア・スロベニア・ボスニア3ヵ国周遊ツアー シリーズ一覧
2014年5月、阪急トラピックスで訪れたクロアチア・スロベニア・ボスニアヘルツェゴビナ3ヵ国周遊の旅。全8回にわたってお届けします。
- 第1話|スロベニア・ブレッド湖と聖マリア教会
- 第2話|ポストイナ鍾乳洞とアドリア海の街オパティア
- 第3話|世界遺産の街シベニクとトロギール
- 第4話|スプリットとモスタル ― クロアチア&ボスニアの世界遺産
- 第5話|アドリア海の真珠・ドブロヴニク(本記事)
- 第6話|念願のプリトヴィッツェ湖群国立公園(近日公開)
- 第7話|首都ザグレブと帰国の途(近日公開)
- 【まとめ】クロアチア・スロベニア・ボスニア3ヵ国周遊ツアー8日間|ルート・費用・世界遺産6つの全記録(近日公開)

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