ポルトガル7日間ツアー、4日目。
3日間お世話になったリスボンを離れ、いよいよ北部ポルトガルへ向かいます。今日訪れるのは、ポルトガル最古の大学町コインブラと、ポルトワインの故郷ポルト。それぞれに世界遺産があり、街並みもまったく違う表情を見せてくれる2つの街です。
この日は小雨の一日。それでも、しっとり濡れた石畳とカラフルな街並みのコントラストが、北部ポルトガルの魅力をより印象的にしてくれました。
リスボンを離れ、北部ポルトガルへ
朝、リスボン郊外のホテルを出発。コインブラまでは約206キロのバス移動です。
窓の外には、中部ポルトガルの田園風景が流れていきます。前日に訪れたトマールやバターリャの近くを通り抜けながら、バスはひたすら北へ。ところどころに広がる丘陵地帯やオリーブ畑を眺めていると、改めてポルトガルという国の景色の多様さを感じました。
世界遺産⑦コインブラ大学
1290年創立、ヨーロッパ最古級の大学町
コインブラは、ポルトガル中部の丘の上に広がる古い大学町。街の中心にあるコインブラ大学は、1290年に創立されたヨーロッパ最古級の大学のひとつです。
2013年には「コインブラ大学—アルタとソフィア」として世界遺産に登録されました。大学そのものが世界遺産という、ちょっと特別な場所です。
バスを降りて坂道を上っていくと、丘の上にどっしりと構える大学の建物が見えてきます。「ここで700年以上も学問が続けられてきたんだ」と思うと、空気そのものが歴史を帯びているように感じました。

ジョアニナ図書館(撮影禁止)
コインブラ大学の最大の見どころは、なんといってもジョアニナ図書館(Biblioteca Joanina)です。
18世紀に建てられたバロック様式の図書館で、約30万冊の蔵書を擁する圧倒的な空間。ハリー・ポッターのホグワーツ図書館の世界観の元になったとも言われている、世界で最も美しい図書館のひとつです。
内部に足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑みました。金で装飾された書架が天井まで連なり、繊細な彫刻と絵画が壁を彩り、まるで王宮の一室のような豪華さ。これが「図書館」だなんて、にわかには信じられません。
そして、興味深いのが「コウモリ」のエピソード。この図書館では、貴重な書物を虫から守るために、夜になると放たれるコウモリが活躍しているのだそうです。さすが世界最古級の大学、知恵の使い方が違いますね。
残念ながら図書館内部は撮影禁止でした。だからこそ、自分の目にしっかり焼き付けて——あの神々しい光景は、忘れることができません。
帽子の間とサン・ミゲル礼拝堂
大学内には他にも見どころがあります。
ひとつは「帽子の間(Sala dos Capelos)」。学位授与式が行われる重要な部屋で、歴代のポルトガル王の肖像画がずらりと並びます。天井の装飾も見事で、まさに「権威の場」という雰囲気。学生たちが、ここで学位記を授与されるのを想像すると、感慨深いものがありました。
もうひとつはサン・ミゲル礼拝堂(Capela de São Miguel)。16世紀の礼拝堂で、内部の壁は色鮮やかなアズレージョで埋め尽くされていました。バロック様式のパイプオルガンも美しく、宗教と学問が一体となったコインブラ大学の歴史を象徴する場所です。

マント姿の学生たち
大学を歩いていると、ふと目に入ったのが黒いマントを羽織った学生たち。
コインブラ大学には、伝統的な「カパ・エ・バトーナ(Capa e Batina)」と呼ばれる学生服が今も残っています。黒のマントと黒のスーツという、まるでハリー・ポッターの世界から飛び出してきたような出で立ち。
観光客の私たちにとっては「絵になる」光景ですが、彼らにとってはごく日常の風景。700年以上続く伝統が、今も生きている街——それを実感できる瞬間でした。
サンタクルス修道院:ポルトガル建国の王が眠る場所
コインブラ大学の次に訪れたのは、街の中心部にあるサンタクルス修道院(Mosteiro de Santa Cruz)です。
この修道院は、12世紀に創設されたポルトガル最古の修道院のひとつ。そして特別なのが、ポルトガル建国の王たちが眠る場所だということ。
- アフォンソ1世(アフォンソ・エンリケス):ポルトガル王国の初代国王
- サンシュ1世:第2代国王
第2話のジェロニモス修道院ではヴァスコ・ダ・ガマの墓に大航海時代の重みを感じましたが、今度はポルトガルという国の始まりそのものに触れた瞬間。「この国は、ここから始まったんだ」と思うと、修道院の中の空気が一層厳かに感じられました。
内部はマヌエル様式の装飾と、もちろんアズレージョで彩られていて、歴史的・芸術的にも見応え十分。コインブラに来たら、大学だけでなくこの修道院もぜひ訪れてほしい場所です。

コインブラ旧大聖堂と自由時間
ロマネスク様式の旧大聖堂(外観)
コインブラ観光の最後は、旧大聖堂(Sé Velha de Coimbra)。12世紀に建てられた、ロマネスク様式の重厚な建物です。今回のツアーでは外観のみの観光でしたが、要塞のようながっしりとした佇まいが印象的でした。

石畳の路地を歩く自由時間
このあとは約1時間の自由時間。石畳の細い路地を歩いたり、坂道の街並みを眺めたり、コインブラの空気をのんびり味わいました。大学町ならではの落ち着いた雰囲気が、とても心地よかったです。
そして、この自由時間にちょっとした素敵な発見がありました——。
金平糖のルーツ「コンフェイト」との出会い
コインブラの石畳の通りを歩いていると、ふと、あるお店のショーウィンドウに目が留まりました。
透明な小袋にぎっしり詰まった、色とりどりの小さな丸い砂糖菓子。ピンク、黄色、白の星のような形——。
あれ?これは……。
金平糖(こんぺいとう)そっくり。いえ、金平糖そのものに見えました。

そう、これがポルトガルの「コンフェイト(Confeito)」。実は、日本の金平糖のルーツがこのお菓子なんです。
大航海時代、ポルトガルから日本へ
コンフェイトは、16世紀にポルトガル人の宣教師たちが日本へ伝えた砂糖菓子。当時の日本では、砂糖そのものが非常に貴重で、こうした色鮮やかな砂糖菓子は「南蛮渡来の珍品」として扱われていました。
有名なエピソードがあります。1569年、ポルトガル人宣教師ルイス・フロイスがガラス瓶に入ったコンフェイトを織田信長に献上したという記録があるんです。信長はこの異国の砂糖菓子をいたく気に入り、宣教師たちを厚遇したと伝えられています。
「コンフェイト」が日本人の口に合わせて発音されるうちに、「金平糖(こんぺいとう)」になっていったんですね。日本の伝統的な和菓子だと思っていたあのお菓子が、実は500年前の大航海時代に海を渡ってきたポルトガルの菓子だったなんて。
ポルトガル人と日本人の、500年前のつながり
第2話のジェロニモス修道院でヴァスコ・ダ・ガマの墓を見たとき、私は大航海時代の重みを感じました。あのとき、ポルトガル人たちが世界の果てを目指して海に出ていったことを実感したのですが——その同じ大航海時代に、彼らは日本にも来ていた。そして、私たちの食文化にまで影響を残していた。
このコンフェイトのショーウィンドウは、ポルトガル人と日本人の、500年前のつながりを、突然目の前に突きつけてきました。
「種子島の鉄砲」「南蛮貿易」「キリスト教伝来」——歴史の教科書で習った言葉が、コインブラの小さな菓子店のショーウィンドウで、急に温度を持って感じられた瞬間。
これだから、旅はやめられません。予想していなかった発見が、こんなふうに思いがけない場所で待っていてくれる。ガイドブックには載っていない、自分だけの旅の宝物を見つけられた瞬間でした。
コインブラを訪れる方は、ぜひ街歩き中に菓子店のショーウィンドウもチェックしてみてください。コンフェイト、おすすめのお土産にもなりますよ。
レストラン「O Trovador」で絶品タコのリゾット
コインブラの伝統的なレストラン
自由時間のあとは、お待ちかねのランチ。コインブラの「Restaurante O Trovador」というレストランへ案内されました。コインブラで人気の伝統的なポルトガル料理店です。
今日のメニューは、サラダ・メイン・デザートのコース。実はこのランチが、ポルトガル旅行で食べた料理の中で一番心に残る一品に出会うことになります。
前菜のサラダ
前菜は、レタス・人参・トマトのサラダ。シンプルですが、野菜が新鮮で、ドレッシングも美味しい。次のメインへの期待が高まります。

絶品!タコのリゾット(アロス・デ・ポルヴォ)
そしてメインは——タコのリゾット(Arroz de Polvo)。
赤茶色のお米にゴロゴロとタコが入っていて、見た目から「美味しそう……」と期待が膨らみます。一口食べてみると、その期待はあっさり超えられました。
タコがびっくりするほど柔らかいんです。
日本のタコのイメージとは違って、噛むとほろりとほどけるような柔らかさ。それでいてタコの旨味はしっかり残っていて、トマトベースのリゾットがその味を引き立てています。これは本当に美味しい——。
正直、このタコのリゾット、「もう一度食べたい!」と今でも思うほどの一品でした。ポルトガル料理のレベルの高さを改めて実感した瞬間。コインブラを訪れる方がいたら、ぜひこのお店でタコのリゾットを試してみてください。

デザートはプリン
デザートは、カラメルソースのかかったポルトガル風プリン。卵の風味がしっかりした、優しい甘さのプリンでした。

世界遺産⑧ポルト歴史地区へ
カラフルな街並みのポルトに到着
コインブラから北へ約146キロ。バスは午後、ポルトに到着しました。
ポルトの街に入った瞬間、目に飛び込んできたのは——カラフルな建物です。
赤、黄色、青、ピンク、緑——色とりどりの壁の家々が、丘の斜面に折り重なるように並んでいます。リスボンともコインブラとも違う、独特の色彩感覚。小雨に濡れた壁が一層鮮やかに見えて、「これがポルトなんだ」と一目で街の個性に魅了されました。
ポルトの歴史地区は、1996年に世界遺産に登録されています。ドウロ川と街の景観全体が世界遺産という、贅沢な場所です。

サン・ベント駅、アズレージョの大壁画
ポルト観光の最初に訪れたのは、サン・ベント駅(Estação de São Bento)。鉄道の現役駅でありながら、世界中の観光客が訪れる名所です。
その理由は——駅の中央ホールの壁を埋め尽くす2万枚以上のアズレージョ。
青と白のタイルに、ポルトガルの歴史的な戦闘場面や王侯貴族の姿が描かれています。「これが、駅?」と思わず言いたくなるほどの圧巻のスケール。普段の通勤・通学客たちが、こんなにも豪華な空間を毎日通っているなんて、ポルトガル人がうらやましくなりました。
ポルトガルの旅で何度も出会ってきたアズレージョですが、ここのスケール感は別格。アズレージョの集大成と言っても過言ではない場所です。

ポルト大聖堂、花のステンドグラスとアズレージョ
次に訪れたのは、ポルト大聖堂(Sé do Porto)。街を見下ろす丘の上に建つ、ポルトを代表する宗教建築です。
内部に入ってまず目を奪われたのが、花の形をしたバラ窓(ステンドグラス)。光が差し込むと、色鮮やかな模様が床に映し出されて、本当に美しい。バターリャ修道院のステンドグラスとはまた違う、幾何学的な美しさがありました。
そして、ここでも壁を彩るのはアズレージョ。回廊の壁一面に青いタイルが施されていて、宗教的な物語が描かれています。聖書のシーンが、青と白のタイル絵巻として展開されているんです。

ドン・ルイス1世橋、トラムが怖かった!
ポルト観光のハイライトのひとつが、ドン・ルイス1世橋(Ponte Dom Luís I)。ドウロ川にかかる、ポルトのシンボル的な巨大な鉄橋です。
1886年に完成したこの橋は、エッフェル塔を設計したエッフェルの弟子テオフィロ・セイリグの作品。当時は世界最長のアーチ橋だったそうです。上下2層構造で、上段は地下鉄(メトロ)、下段は自動車と歩行者が通行できる作りになっています。
今回のツアーでは橋を渡ることはせず、橋のたもとから眺める形での観光でした。それでも、この巨大な鉄骨アーチを間近で見る迫力は十分。記念写真をたくさん撮りました。
そして、ちょっとびっくりしたのが——トラムが目の前をスレスレで通り過ぎること。
橋の上段にはメトロが走るのですが、撮影スポットの目の前を結構な速度で通り過ぎるんです。「えっ、こんなに近い距離で?」と思わず後ずさり。ポルトの観光は、ちょっとしたスリルも味わえます(笑)。

サンフランシスコ教会、黄金の内装
ポルト観光の最後は、サンフランシスコ教会(Igreja de São Francisco)。外観はゴシック様式の地味な建物ですが、一歩中に入ると——息を呑むほどの黄金の世界が広がります。
柱、壁、天井、祭壇——あらゆる場所が金で覆われていて、その豪華絢爛さは想像をはるかに超えていました。「ターリャ・ドウラーダ(金色彫刻)」と呼ばれる技法で、約400キロもの金が使われているそうです。
残念ながら内部は撮影禁止。一枚も写真が残せませんでした。でも、その分しっかり目に焼き付けてきました。ポルトの大航海時代の繁栄、ブラジルから運ばれてきた金で作られたとされる豪華な装飾——「これがあの大航海時代の富なのか」と、500年前のポルトガル人が築き上げたものの大きさを実感する瞬間でした。

エスピーニョのホテル「PRAIAGOLFE」へ
海辺の街エスピーニョ、2連泊のホテル
ポルト観光を終えたバスは、宿泊先のエスピーニョ(Espinho)へ。ポルトから南へ約13キロの、大西洋に面した小さな海辺の街です。
2連泊するホテルは「PRAIAGOLFE HOTEL」。ホテル名の「プライア(Praia)」はポルトガル語で「ビーチ」を意味し、その名の通りビーチが近くにある立地でした。
客室はシンプルですが清潔感があり、ゆっくり休めるお部屋。連泊できるホテルは、やはり荷物の出し入れがラクで助かります。

ホテルでの夕食
前菜のスープ
夕食はホテルのレストランで。前菜は淡い黄色の優しいスープでした。温かいスープが冷えた体にじんわり染み渡ります。

メインはビーフステーキ
メインは、ビーフステーキ。ライス、ブロッコリー、カリフラワー、人参の付け合わせとともに、シンプルに焼かれたお肉です。タコのリゾットのインパクトが強すぎて、ちょっと地味に感じてしまいましたが(笑)、味はしっかり美味しかったです。

デザートは濃厚チョコレートケーキ
デザートは、見るからに濃厚なチョコレートケーキ。表面が艶々のチョコレートで覆われた、しっとりしたケーキでした。甘さもしっかりあって、食後の幸福感を高めてくれます。

2つの世界遺産を巡った4日目を振り返って
コインブラの大学町、ポルトのカラフルな街並み——世界遺産2つを巡った充実の一日でした。
そして、忘れられないのが、コインブラで食べたタコのリゾット。「もう一度食べたい」と心から思える料理に出会えたのも、この日の大きな収穫でした。
明日はいよいよ、ポルトガルを離れてスペインへ国境越え。世界三大巡礼地のひとつ、サンチャゴ・デ・コンポステーラへ向かいます。
次回予告:スペイン国境を越え、巡礼の終着点へ
5日目は、エスピーニョからスペインへ国境越え。世界遺産サンチャゴ・デ・コンポステーラへ向かいます。1000年以上にわたって巡礼者たちが歩いてきた「カミーノ(巡礼の道)」の終着点で、私は何を感じることになるのか——。
次回もぜひお付き合いください。
ポルトガル7日間ツアー旅行記シリーズ
- 【序章】ポルトガル7日間ツアー|世界遺産9つを巡る大航海時代の国へ
- 【第2話】リスボン観光|大航海時代の世界遺産3つを巡る
- 【第3話】ロカ岬&シントラ宮殿|ユーラシア大陸最西端への旅
- 【第4話】トマール・バターリャ・オビドス|中部ポルトガル世界遺産3つ巡り
- 【第5話】コインブラ大学&ポルト歴史地区|世界遺産の街を巡る ←今ココ
- 【第6話】サンチャゴ・デ・コンポステーラ|国境を越えて巡礼の終着点へ(近日公開)

コメント