ポルトガル7日間ツアー、2日目の朝。
窓の外は、小雨が降る灰色の空。それでも私の心は晴れやかでした。今日はいよいよ大航海時代の中心地リスボンの世界遺産を巡る日。500年前、この街から世界の海へ船出していったポルトガル人の足跡をたどります。
ホテルを8時に出発。バスがリスボン市街に近づくにつれて、街角を走るレトロな路面電車が目に飛び込んできました。「ああ、私はポルトガルに来たんだ」——その瞬間、ようやく実感が湧いてきたんです。

世界遺産①ジェロニモス修道院へ
マヌエル様式の最高傑作
最初に訪れたのは、リスボン西部ベレン地区にあるジェロニモス修道院。1983年に世界遺産に登録された、ポルトガルを代表する建造物です。
建物に近づくと、まずその大きさに圧倒されます。横に長く伸びる修道院のファサードは、装飾の細かさが信じられないほど。これがマヌエル様式と呼ばれる、ポルトガル独特の建築様式です。
マヌエル様式は、大航海時代の繁栄を反映して生まれた装飾的な建築様式。ロープや海藻、サンゴ、貝殻といった海にまつわるモチーフがふんだんに彫り込まれているのが特徴です。修道院の柱や窓枠をよく見ると、本当にそうした海のモチーフが見つかります。

静謐な回廊と美しい中庭
入場して最初に案内されたのは、修道院の回廊。これが、本当に美しかったんです。
二層に積まれたアーチが中庭を四方から囲み、柱の一本一本に細やかな彫刻が施されています。アーチの曲線が連続する眺めは、まるで石のレースのよう。
かつてここで、修道士たちが祈りと瞑想の時間を過ごしていたんだろうな——そう想像すると、500年の時間がふっと身近に感じられました。

大航海時代の英雄、ヴァスコ・ダ・ガマの墓
修道院に併設されたサンタ・マリア教会へ入ると、入口すぐ右手に、ある大きな石棺が置かれていました。
ヴァスコ・ダ・ガマの墓です。
1498年、アフリカ大陸南端の喜望峰を回り、ヨーロッパ人として初めてインドへの航路を開いた偉大な航海者。日本の教科書にも必ず登場する、世界史を変えた人物が、ここに眠っている——。
石棺の上には、彼が手にしていた帆船の模型が彫られています。その帆船は、たぶん彼が「サン・ガブリエル号」に乗ってインドを目指したときの姿でしょう。
正直、教科書の中の人物だと思っていた歴史上の偉人と、こうして「同じ空間にいる」という体験は、想像以上に重みのあるものでした。大航海時代の歴史を肌で感じたのは、まさにこの瞬間だったと思います。

ステンドグラスとアズレージョの美
教会内部に進むと、見上げるほど高い天井と、色とりどりのステンドグラス。差し込む光が床に色を落とし、空間全体が祈りの場としての厳かな雰囲気に包まれていました。
壁の一部には、青と白のアズレージョ。ポルトガルらしい装飾が、教会の中にも息づいています。
修道院、教会、回廊——どこを切り取っても絵になる場所で、シャッターを切る手が止まりませんでした。

元祖エッグタルトの店「パステイス・デ・ベレン」
1837年創業、修道院から伝わったレシピ
ジェロニモス修道院を出てすぐ、添乗員さんが案内してくださったのは、ベレン地区で有名なパステイス・デ・ベレン(Pasteis de Belem)。
このお店は、ポルトガルの国民的スイーツ「エッグタルト(パステル・デ・ナタ)」の元祖と言われています。なんと1837年創業。180年以上前から、同じレシピでエッグタルトを焼き続けているんです。
面白いのは、そのレシピがもともとジェロニモス修道院から伝わったものだということ。19世紀の修道院解散の際に、修道士たちが秘伝のレシピをこのお店に託したと言われています。だから「パステイス・デ・ベレン」と「ジェロニモス修道院」は、すぐ近くにあるだけでなく、歴史的にも深くつながっているんですね。

夜のホテルで食べた、忘れられない一口
お店ではテイクアウトでエッグタルトを1つ購入。その日の夜、ホテルの部屋で食べました。
サクサクのパイ生地に、とろりとしたカスタード。表面はこんがりと焦げ目がついていて、口に入れた瞬間に広がる甘さと卵の風味。シナモンを少し振ると、また違った味わいに——。
「これは美味しい」と心の中で何度もつぶやきました。
そして同時に思ったのは、「もう一つ買っておけばよかった……」。
これからパステイス・デ・ベレンに行かれる方には、迷わず複数買うことをおすすめします。本当に美味しいので、絶対後悔しません。
ベレンの塔と発見のモニュメント
世界遺産②ベレンの塔(外観のみ)
続いて訪れたのは、テージョ川のほとりに佇むベレンの塔。1983年、ジェロニモス修道院と同時に世界遺産に登録されています。
このツアーではバスから降りて外観の写真撮影タイム。内部見学はなしでしたが、テージョ川を背景に佇む白いベレンの塔は、写真で見ていた通りの美しい姿でした。
ベレンの塔は16世紀初頭、マヌエル1世の命によって建てられたもの。大航海時代、リスボンを出航する船を見送り、戻ってくる船を迎える「リスボンの玄関口」の役割を果たしていました。
「川の貴婦人」とも呼ばれる優美な姿。500年前、ヴァスコ・ダ・ガマや他の航海者たちも、この塔を見送りに、また帰還の目印にしたのでしょう。

発見のモニュメント
ベレンの塔から少し移動した場所にあるのが、発見のモニュメント(パドラン・ドス・デスコブリメントス)です。
こちらは世界遺産ではありませんが、リスボン観光の必訪スポット。1960年、エンリケ航海王子の没後500年を記念して建てられた、巨大な石碑です。
テージョ川に向かって大きな帆船の形をしており、その船首にはエンリケ航海王子が立っています。彼は実際の航海者ではありませんが、ポルトガルの大航海時代の幕を開けた立役者。船首の彼を先頭に、ヴァスコ・ダ・ガマ、マゼランなど大航海時代に活躍した33人の偉人たちが並んで立っています。
モニュメントの足元には、世界地図のモザイク。ポルトガル人が世界中に進出した年代が、地図上に記されています。日本に到達した1541年(諸説あり)の文字を見つけたとき、なんだか不思議な気持ちになりました。
あの時代、ポルトガル人がここから出航して、本当に地球の反対側まで到達していたんだ——。500年の距離が、急に縮まったような感覚でした。


リスボン名物の魚料理ランチ
レストラン「Grand’Elias」へ
午前の観光を終えて、お昼はリスボン市内のレストラン「Grand’Elias」へ。
ツアーで案内されるレストランは、現地の伝統料理を楽しめるところが多くて、毎回楽しみのひとつ。今日のメニューは、サラダ・魚料理・デザートのコースでした。
前菜のサラダ
前菜は、レタス・トマト・玉ねぎ・人参・コーンに、オリーブを添えた彩り豊かなサラダ。シンプルですが、野菜の味がしっかりしていて、これだけでも満足感がありました。

メインはイワシの炭火焼き
メインは、イワシの炭火焼き(サルディーニャス・アサーダス)。ポルトガルを代表する魚料理で、新鮮なイワシをシンプルに塩と炭火だけで焼いた一品です。
付け合わせは、茹でジャガイモとライス。レモンを絞っていただくと、イワシの脂と酸味が絶妙にマッチして、これがとても美味しい。日本の塩焼きとは少し違う、香ばしさが特徴的でした。
ポルトガルはイワシの消費量が世界トップクラスだそうで、夏には「イワシ祭り」も開催されるほど。ポルトガル人にとって、イワシは「国民食」とも言える存在なんですね。

デザートはエッグタルトとアイスクリーム
デザートは、なんと再びエッグタルト。バニラアイスクリームが添えられています。
パステイス・デ・ベレンとは少し違うタイプですが、これはこれで美味しい。温かいタルトと冷たいアイスのコントラストがたまりません。
ポルトガルでは、エッグタルトは特別なスイーツではなく、カフェに行けば普通に出てくる日常の味。この旅行中、何度か食べる機会がありましたが、お店によって少しずつ味が違うのも面白かったです。

一人参加でも楽しめたリスボン午前
このツアーは一人参加で申し込みましたが、ランチのテーブルでは他の参加者の方々と自然と会話が生まれて、孤独感を感じる場面はありませんでした。実は、私と同じく一人参加の方が何人かいたんです。
「どこから来たんですか?」「今までどんな国を回りましたか?」——旅の話で盛り上がるのは、世代を問わず楽しいもの。観光中も、自然と気の合う方と並んで歩いたり写真を撮り合ったり。一人参加でも気負わずに楽しめるのが、ツアー旅行の良いところだと改めて思いました。
小雨は降ったり止んだりでしたが、世界遺産2つと発見のモニュメントを巡り、元祖エッグタルトも味わって、本当に充実した午前中でした。
次回予告:ユーラシア大陸最西端ロカ岬へ
午後はリスボンを離れて、世界遺産シントラの文化的景観へ。そして、その先にはユーラシア大陸最西端のロカ岬が待っています。
大西洋からの強風が吹き付ける断崖の岬で、私はあるものを手にすることになります——。
次回もぜひお付き合いください。
ポルトガル7日間ツアー旅行記シリーズ
- 【序章】ポルトガル7日間ツアー|世界遺産9つを巡る大航海時代の国へ
- 【第2話】リスボン観光|大航海時代の世界遺産3つを巡る ←今ココ
- 【第3話】シントラ宮殿&ロカ岬|ユーラシア大陸最西端への旅(近日公開)
- 【第4話】トマール・バターリャ・オビドス|中部ポルトガルの世界遺産3つ(近日公開)
- 【第5話】コインブラ大学&ポルト歴史地区|世界遺産の街を巡る(近日公開)
- 【第6話】サンチャゴ・デ・コンポステーラ|国境を越えて巡礼の終着点へ(近日公開)


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