リスボン市内でランチを終え、午後はいよいよユーラシア大陸最西端のロカ岬へ。
「最西端」という言葉だけで、なんだか胸が高鳴ります。地理の教科書の中でしか知らなかった場所に、これから自分が立つ。それは、私にとって特別な体験になる予感がしていました。
午前中は小雨でしたが、午後になって雨は止み、ところどころに晴れ間も見えてきました。バスはリスボン市街を離れ、西へ西へと走っていきます。
ユーラシア大陸最西端、ロカ岬
断崖の岬に立つ
リスボンから西へ約40キロ。バスを降りた瞬間、目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる大西洋でした。
そして、足元には高さ約140メートルの断崖。岬の縁から下をのぞくと、青い海が白い波しぶきを上げて岩に砕けています。
その向こうに広がる海の彼方には——もう陸地はありません。
「ここがユーラシア大陸の最西端なんだ」
そう実感した瞬間、地球の大きさと、自分が今いる場所の特別さが、じわじわと心に染み込んできました。

大西洋からの強風
そして、この岬で何より忘れられないのは——とにかく風が強かったこと。
大西洋から吹き付ける風は、想像をはるかに超える強さでした。立っているだけでも体ごと持っていかれそうで、髪は逆立ち、上着のフードは飛ばされそうになります。会話の声もかき消されるほど。
事前に「ロカ岬は風が強い」と聞いてはいましたが、これほどとは思っていませんでした。これからロカ岬へ行かれる方は、フード付きの上着や、髪をまとめるゴムを準備しておくと安心です。
それでも、景色は最高の一言。風と波の音、果てしなく続く海、頬を撫でる潮の香り。五感のすべてで「最西端」を体感できる場所でした。
「ここに地終わり、海始まる」カモンイスの石碑
岬には、十字架を頂いた石碑が立っています。
この石碑に刻まれているのが、ポルトガルの国民的詩人ルイス・デ・カモンイスの、あの有名な一節です。
Onde a terra se acaba e o mar começa
(ここに地終わり、海始まる)
大航海時代を生きた詩人カモンイスが、叙事詩『ウズ・ルジアダス』に書いたこの言葉。ロカ岬の景色そのものを、これほど見事に表現した一節はないと思います。
陸が終わり、海が始まる場所——。シンプルだけれど、この岬の意味と、ここに立った人間が感じる気持ちのすべてが、この一文に詰まっている気がしました。

灯台と最西端の標識
岬には、白い灯台もあります。1772年に建てられた、ポルトガルでも古い灯台のひとつ。今もなお、大西洋を航行する船のために光を放ち続けています。
そして、観光客に人気の「ユーラシア大陸最西端」の標識。北緯38度47分、西経9度30分——ここがユーラシア大陸で最も西にある場所であることを示しています。
この標識の前で写真を撮るのは、ロカ岬に来た人なら誰もが必ずすること。私もしっかり一枚、収めてきました。

ロカ岬到達証明書はもらう?もらわない?
ロカ岬には、観光案内所でもらえる「ロカ岬到達証明書」というものがあります。名前と日付を入れてもらえる、旅の記念にぴったりの一枚です。
添乗員さんから「証明書がもらえますよ」と案内されたのですが、有料(数ユーロ)だったので、私は今回はパスすることにしました。荷物を増やしたくなかったのと、心の中で「最西端に立った」という事実があれば十分だと感じたのも理由のひとつです。
もちろん、形に残る記念品として証明書を手に入れる方も多いです。もらうかどうかは完全に好みの問題なので、これからロカ岬へ行かれる方は、ご自身の旅のスタイルに合わせて選んでみてください。
次は「最南端」へ——新たな旅の目標
強風の中、岬に立ち、果てしない大西洋を眺めていたとき——ふと、ある思いが湧き上がってきました。
「次は喜望峰に行ってみたい」
アフリカ大陸南端の喜望峰は、午前中に訪れたジェロニモス修道院に眠るヴァスコ・ダ・ガマが、インド航路を開く際に回った岬です。「ユーラシア大陸の最西端」に立った今、自然と次は「アフリカ大陸の南端」へ——という気持ちが芽生えてきたんですね。
形に残る証明書ではなく、新たな旅の目標。それが、私がロカ岬で手にしたものでした。
500年前、大航海時代のポルトガル人たちも、ここで何かを心に決めて、未知の海へ漕ぎ出していったのかもしれません。そんなことを思いながら、私はバスに戻りました。
世界遺産③シントラの王宮へ
王族の避暑地、世界遺産シントラ
ロカ岬を出発したバスは、内陸へ向かってシントラへ。リスボンから北西約30キロに位置する、世界遺産の街です。
シントラは古くからポルトガル王族の避暑地として愛されてきた場所。1995年に「シントラの文化的景観」として世界遺産に登録されました。森に囲まれた緑豊かな丘陵地に、王宮や貴族の館、庭園が点在しています。
今回のツアーで訪れたのは、その中心にあるシントラ宮殿(Palácio Nacional de Sintra)です。

2本の円錐形の大煙突
シントラ宮殿といえば、なんといっても2本の白い大きな円錐形の煙突が特徴。一度見たら忘れられない、ユニークなシルエットです。
この煙突は、宮殿の厨房から立ち上がるもの。かつてこの厨房で、王族の食事のために大量の料理が作られていたんですね。煙突を見るだけで、当時の宮廷生活の規模が想像できます。
宮殿内部、アズレージョの美しさに圧倒される
宮殿の内部は見学可能。ツアーで案内され、私たちも中へ入りました。
そして——内部に足を踏み入れた瞬間、壁一面のアズレージョに圧倒されました。
シントラ宮殿のアズレージョは、ポルトガル国内でも最古級のものを多く残していると言われています。青と白だけでなく、緑や黄色も使われた色鮮やかなタイルが、廊下や部屋の壁を埋め尽くしているのです。
幾何学模様、植物模様、物語を描いた絵柄——一枚一枚のタイルが、すべて手作業で描かれた美術品。歩くたびに目に飛び込んでくる装飾の連続に、シャッターを切る手が止まりませんでした。
ジェロニモス修道院の壮大さとはまた違う、細やかで親しみやすい美しさ。同じポルトガルでも、王族の住まいと修道院では、こんなにも雰囲気が違うんですね。


シントラとロカ岬、合わせて約2時間
シントラとロカ岬の観光は、合わせて約2時間。両方を駆け足で巡る形でしたが、それぞれの場所の魅力をしっかり感じることができました。
もし時間に余裕があれば、シントラには他にもペーナ宮殿やムーアの城跡など、見どころがたくさんあります。再訪してじっくり巡る価値のある場所だと感じました。
リスボンへ戻り、ホテルで夕食
2連泊の安心感
シントラ観光を終え、バスはリスボン郊外のホテル「TRYP MONTIJO PARQUE」へ。2連泊のホテルなので、荷造りの必要もなく、部屋に戻るだけ。これが本当にラクなんです。
夕食はホテルのレストランでいただきました。
前菜は野菜のポタージュ
前菜は、温かい野菜のポタージュスープ。優しいオレンジ色で、なめらかな口当たり。野菜の自然な甘みが感じられる、体にしみる味でした。
ポルトガル料理にはスープの種類が豊富で、有名な「カルド・ヴェルデ(緑のスープ)」をはじめ、各地に郷土色のあるスープがあります。寒い日の最初の一口として、ポタージュは本当にありがたかったです。

メインはチキンのグリル
メインは、チキンのグリル。香ばしく焼かれた鶏肉に、ローストポテト・人参・インゲンの付け合わせ。ポルトガル料理らしい素朴な一皿でした。
鶏肉の表面はカリッと、中はジューシー。シンプルな調理ですが、肉の旨味がしっかり感じられました。ローストポテトもほっくほくで、思わず完食。

部屋でいただく、パステイス・デ・ベレンのエッグタルト
夕食を終えて部屋に戻り、お楽しみが待っていました。
午前中、ジェロニモス修道院の近くで買ったパステイス・デ・ベレンのエッグタルトです。
サクサクのパイ生地に、とろりとしたカスタード。表面の焦げ目から立ちのぼる甘い香り。リスボンの夜、ホテルの部屋でひとり、エッグタルトを頬張る時間——これがもう、本当に幸せでした。
そして冒頭でも書いた通り、心の底から思いました。
「もう一つ買っておけばよかった……」
本当に、本当に美味しいので、これからパステイス・デ・ベレンへ行かれる方は、ぜひ複数買ってくださいね。
盛りだくさんの2日目を終えて
朝のジェロニモス修道院から始まり、ベレンの塔、発見のモニュメント、ロカ岬、シントラ宮殿——。世界遺産3つ+発見のモニュメント+ロカ岬と、本当に盛りだくさんの2日目でした。
ロカ岬で湧き上がった「次は喜望峰へ」という新たな目標も、私の旅人としての地図に、また一つ新しい行き先を書き加えてくれました。
明日からはリスボンを離れ、ポルトガル中部の世界遺産巡りが始まります。
次回予告:中部ポルトガル、3つの世界遺産
3日目は、リスボンを離れて中部ポルトガルへ。テンプル騎士団の街トマール、戦勝記念のバターリャ修道院、そして「谷間の真珠」と呼ばれる白い城壁の村オビドス——3つの世界遺産を一日で巡ります。
次回もぜひお付き合いください。
ポルトガル7日間ツアー旅行記シリーズ
- 【序章】ポルトガル7日間ツアー|世界遺産9つを巡る大航海時代の国へ
- 【第2話】リスボン観光|大航海時代の世界遺産3つを巡る
- 【第3話】ロカ岬&シントラ宮殿|ユーラシア大陸最西端への旅 ←今ココ
- 【第4話】トマール・バターリャ・オビドス|中部ポルトガルの世界遺産3つ(近日公開)
- 【第5話】コインブラ大学&ポルト歴史地区|世界遺産の街を巡る(近日公開)
- 【第6話】サンチャゴ・デ・コンポステーラ|国境を越えて巡礼の終着点へ(近日公開)


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