マレーシア旅行記の第2回です。今回は、ツアー2日目——といっても、日本を発って機内で一夜を過ごし、早朝にクアラルンプールへ着いたその日のことです。
驚いたことに、このツアーはホテルにチェックインする前から観光が始まります。空港に着いた足で、そのまま市内観光へ。新王宮、国家記念碑、独立広場、そしてペトロナスツインタワー。クアラルンプールの主要スポットを、午前中だけでぐるりと巡ってしまう行程でした。
正直にお伝えすると、この日の観光は「ほぼ外観を眺める」半日でした。それでも、一人参加の私にとっては発見の多い時間で。ツアーにつきものの「お買い物立ち寄り」の実際も含めて、包み隠さず書いていきます。
※本記事は2017年2月の訪問時点の情報をもとにしています。施設の状況や料金などは、旅行前に必ず最新情報をご確認ください。
機内泊明けの朝、いきなり市内観光へ
クアラルンプール国際空港に着いたのは、現地時間の朝6時45分。日本との時差はわずか1時間ですから、体感としては日本の朝8時前くらい。機内でうとうとしただけの体には、正直なところ少しこたえる時間帯です。
それでも、到着ロビーで日本語を話す現地ガイドさんが出迎えてくれた瞬間、ふっと肩の力が抜けました。ここから先は頼れる案内役がいてくれる。一人参加で少し緊張していた私には、この安心感が何よりありがたかったです。
荷物をバスに積み込み、いよいよ市内へ。ホテルに向かうのかと思いきや、バスはそのまま観光スポットへ走り出します。「え、今から観光?」と一瞬たじろぎましたが、考えてみればこれは効率的。チェックインは午後になることが多いので、午前中の時間を観光にあてるのは理にかなっています。眠気は、走り出す景色がすぐに吹き飛ばしてくれました。
新王宮(イスタナ・ヌガラ)を門前から
最初に向かったのは、新王宮。マレー語で「イスタナ・ヌガラ」と呼ばれる、マレーシア国王の住まいです。
この王宮、実はまだ新しい建物です。それまで使われていた旧王宮が老朽化したため、2011年に現在の場所——クアラルンプール北部のジャラン・ドゥタ地区へと移されました。国王が実際に暮らしているので、中に入ることはできません。私たちも門の前から眺めるかたちです。

ちなみに、マレーシアの国王のしくみは日本とはずいぶん違います。この国には13の州があり、そのうち9つの州には今もスルタン(君主)がいます。そして国王は、この9人のスルタンのなかから5年ごとに交代で選ばれるのだそうです。ガイドさんの説明に、「王様が持ち回り制?」と、同じツアーの参加者から驚きの声が上がっていました。
門の前で私がいちばん心を惹かれたのは、建物そのものよりも、馬に乗った衛兵の姿でした。凛々しい制服に身を包んだ衛兵が、馬上でぴたりと動かず立っている。その馬が、また見事におとなしいのです。観光客がカメラを向けても、ざわざわと人が行き交っても、少しも動じる様子がありません。よくよく訓練されているのだろうなと、思わず見入ってしまいました。建物の壮麗さより、この馬の落ち着きぶりのほうが記憶に残っているのだから、旅というのは面白いものです。
国家記念碑(トゥグ・ヌガラ)
続いて訪れたのは、国家記念碑。マレー語で「トゥグ・ヌガラ」といいます。
これは、マレーシアが独立へと歩むなかで戦い、命を落とした兵士たちを弔うために建てられた、高さ15メートルほどのブロンズ像です。数人の兵士が力強く立つ姿が表現されていて、独立を勝ち取るまでの歴史の重みが伝わってきます。第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして独立へと至る戦いへの追悼が込められているのだそうです。

興味深いのは、この像の作者フェリックス・デ・ウェルトンが、アメリカ・ワシントンD.C.にある有名な硫黄島記念碑を手がけた人物でもあるという点です。言われてみれば、力強く群像を表現するあの作風に、どこか通じるものがあるのかもしれません。
群像のかたわらには、灰色の石を積み上げた慰霊碑(セノタフ)も立っていました。碑には「TO OUR GLORIOUS DEAD(栄光ある戦没者たちへ)」の文字とともに、1914–1918、1939–1945、1948–1960という3つの年代が刻まれています。二度の世界大戦、そしてマラヤ危機と呼ばれる動乱の時代。この国が乗り越えてきた歴史が、静かな数字となって刻まれていました。

滞在時間は20分ほど。周囲は緑と噴水に囲まれ、朝の空気のなかで静かに佇む記念碑は、慰霊の場にふさわしい落ち着きがありました。
独立広場(ムルデカ・スクエア)
次は独立広場へ。マレー語では「ダタラン・ムルデカ」。「ムルデカ」とは、独立を意味する言葉です。
ここは、マレーシアの歴史にとって特別な場所です。1957年8月31日、この広場でイギリスからの独立が宣言されました。それまで掲げられていたイギリスの国旗ユニオンジャックが降ろされ、代わりに新しい国の旗が初めて空に翻った——まさにその瞬間の舞台になったのが、この芝生の広場なのです。
広場のかたわらには、驚くほど高い旗竿が立っています。その高さ、およそ100メートル。世界でも指折りの高さだそうで、てっぺんにはマレーシアの国旗が悠々とはためいていました。首が痛くなるほど見上げて、ようやく旗の全体が見えるほどです。
広場をぐるりと囲むのは、イギリス統治時代に建てられた歴史的な建物の数々。なかでも目を引くのが、たまねぎのようなドームを頂いたスルタン・アブドゥル・サマド・ビルです。かつてこの広場はイギリス人たちのクリケット競技場として使われていたそうで、そう聞くと、青々とした芝生の広がりにも納得がいきます。植民地時代から独立へ——この国の歩んできた道が、一つの広場にぎゅっと凝縮されているようでした。

ペトロナスツインタワーとKLCCパーク
そして、クアラルンプールといえばこれ。ペトロナスツインタワーです。
高さ452メートル、88階建て。1998年の完成から数年間は「世界一高いビル」の座に君臨し、今も「ツインタワー(双子のビル)としては世界一の高さ」を誇る、マレーシアのシンボルです。イスラム教の国らしく、モスクの尖塔をモチーフにしたデザインが特徴で、銀色の車体が青空に突き刺さるように伸びています。

写真を撮ってみて気づいたのですが、私が訪れた2017年当時は、ツインタワーのすぐ右隣で、別の超高層ビルが建設の真っ最中でした。クレーンが何本も空へ伸びる光景に、この街がいまも成長を続けているのだと実感しました。数年後にまた訪れたら、スカイラインはきっと違って見えるのでしょうね。
日本人として少し誇らしいのは、この2本のタワーのうち片方を、日本の建設会社が手がけたという事実です。タワー1を日本の企業が、タワー2を韓国の企業が担当し、2社が競い合うように建設したのだとか。見上げながら「あの片方は日本製なんだ」と思うと、遠い異国のランドマークが急に身近に感じられました。
足元に広がるのはKLCCパーク。ツインタワーを見上げる絶好のスポットで、緑豊かな公園です。私たちは外から眺めるだけでしたが、それでもこの2本の塔を真下から見上げる迫力は格別。写真に収めようとしても、なかなか全体がフレームに入りきらない。そのスケールの大きさこそが、見どころなのだと思います。
「登らなくてもいいの?」と思われるかもしれませんが、外から見上げるだけでも十分に満足でした。むしろ、塔に登ってしまうと、この美しいツインタワーの姿そのものは見られなくなりますからね。
ツアーの「お買い物立ち寄り」、正直レポート
さて、ここからは第1回で予告した「お買い物立ち寄り」の話です。パッケージツアーを検討している方が、いちばん身構えるところではないでしょうか。私も参加前は少しだけ警戒していました。
この日、立ち寄ったのは貴金属店、民芸品店、チョコレート店の3か所です。いわゆる、ツアーの定番コースですね。
結論から正直に申し上げます。私は、何も買いませんでした。
もともと物欲が薄いほうで、「せっかくだから」という勢いで買い物をすることがほとんどないのです。どのお店でも店員さんが丁寧に商品を説明してくれましたが、ひととおり眺めて、店内をぶらぶらして、それでおしまい。それでも、まったく問題ありませんでした。
ツアーの立ち寄りと聞くと、「何か買わされるのでは」「買わないと気まずいのでは」と心配される方が多いと思います。でも、少なくとも私が経験した範囲では、買わないからといって嫌な顔をされることはありませんでした。買わない人も、ちゃんと一定数いるのです。堂々と、見るだけ見て、涼しい店内で少し休ませてもらう。そのくらいの気持ちで十分だと思います。
むしろ、こうした立ち寄りは「その土地の名産品を知る時間」だと捉えると、気持ちが楽になります。マレーシアではどんな貴金属が採れるのか、どんな民芸品が親しまれているのか。買わなくても、見て回るだけで小さな学びがあります。冷房の効いた店内は、暑い国での休憩スポットにもなりますしね。
「買い物立ち寄りが不安でツアーをためらっている」という方へ。どうか、身構えないでください。買っても買わなくても、あなたの自由です。
昼食は本格中華で一息
午前の観光と立ち寄りを終え、昼食は中華料理でした。
マレーシアは、マレー系・中国系・インド系が暮らす多民族国家。なかでも中国系の人々が多く、中華料理は現地の食文化にすっかり根づいています。旅先で食べる中華、と聞くと少し意外に思われるかもしれませんが、マレーシアにおいては、これもまた立派な「ご当地の味」なのです。
機内泊明けで少し疲れた体に、あたたかい中華のごはんがじんわりしみました。食べ慣れた味というのは、異国では思いのほかありがたいものです。「初めての国で、口に合うものがあるか不安」という方も、マレーシアなら心配いりません。慣れ親しんだ中華の味が、そっと旅の疲れを癒してくれます。
シェラトン・インペリアル・クアラルンプール宿泊記
昼食を終え、ようやくホテルへ。今回2連泊するのは、シェラトン・インペリアル・クアラルンプールです。
チェックインは、現地ガイドさんがまとめて手続きをしてくれました。私たち参加者は、ロビーで座って待っているだけ。これが本当に楽なのです。慣れない英語でフロントとやりとりする必要もなく、鍵を受け取ればそのままお部屋へ。一人参加だと「手続き、うまくできるかな」と不安になりがちですが、その心配が一切いらない。ツアーのありがたみを、こういう場面でしみじみ感じます。
お部屋の様子
通されたお部屋は、ダブルベッドのシングルユース。広すぎず、かといって狭くもなく、一人でくつろぐにはちょうどよい、落ち着いた空間でした。深みのある赤いヘッドボードや、ゆったりと身を預けられるカウチが、部屋全体を上品に引き締めていました。

個人的にうれしかったのが、バスタブがあったこと。海外のホテルはシャワーのみのことも多いので、湯船にゆっくり浸かれるのは何よりの贅沢です。歩き疲れた一日の終わりに、あたたかいお湯に体を沈める。この時間があるかないかで、翌日の元気がまるで違ってきます。
窓から眺める景色も良く、クアラルンプールの街並みを見下ろしながら、しばしぼんやり。一人参加の旅で、デラックスクラスのホテルに泊まれるというのは、パッケージツアーならではの贅沢です。個人手配ではなかなか手が届かないグレードのホテルに、ツアー料金の枠内で泊まれてしまう。この「分不相応なくらいの快適さ」も、ツアー旅行のひそかな醍醐味だと思っています。
朝食ビュッフェ
滞在中の朝食は、ホテルのビュッフェで。正直に言えば、「これが忘れられない!」というほど強烈に印象に残った料理があったわけではありません。でも、それは決して悪い意味ではないのです。
種類はしっかりと豊富で、パンもフルーツも、温かい料理も一通り揃っている。特別に感動する一皿はなくとも、毎朝きちんと満たされる。旅先の朝食としては、それで十分ではないでしょうか。奇をてらわず、安定しておいしい。デラックスクラスのホテルらしい、堅実な朝食でした。
ちなみにこの日の一皿には、インド系の軽食であるサモサがさりげなく並んでいました。サラダやクロワッサンと一緒に、こうした多民族国家らしい料理がしれっと登場するのも、マレーシアの朝ごはんの面白いところ。何気ない一皿にも、この国らしさがのぞいていました。

濃密な2日目を終えて
機内泊明けの体で、朝から市内をぐるり。ほぼ外観を巡る観光でしたが、それでもクアラルンプールという街の輪郭は、しっかりつかむことができました。歴史ある独立広場から、近未来的なツインタワーまで。古いものと新しいものが同居する、この街ならではの面白さを感じた一日でした。
そして、この日の夜。私はオプショナルツアーに参加します。向かった先は、クアラルンプールから車で1時間半ほど離れた、セランゴール州の川。目当ては——蛍です。
次回、「セランゴールの蛍鑑賞と海鮮料理の夕食」編。写真には残せなかった、あの幻想的な光景を、言葉を尽くしてお伝えしたいと思います。
シリーズ|マレーシア クアラルンプール・マラッカ 4日間(全6話)
この旅行記は全6話でお届けします。公開が進みしだい、順次リンクを追加していきます。
- 羽田深夜発・機内泊のリアルな過ごし方|JTB旅物語・一人参加(近日公開)
- 【本記事】クアラルンプール市内観光|王宮・国家記念碑・独立広場・ツインタワーを半日で
- セランゴールの蛍鑑賞と海鮮料理の夕食|オプショナルツアー参加レポート(近日公開)
- バティック染め体験とKLタワー展望台|午前半日のオプショナルツアー(近日公開)
- 世界遺産マラッカ観光|オランダ広場・セントポール教会・サンチャゴ砦とニョニャ料理(近日公開)
- マレーシア4日間ツアーの費用と持ち物まとめ|一人参加で失敗しないための全記録(近日公開)

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