マレーシア旅行記の第3回です。今回は、ツアー2日目の夜に参加したオプショナルツアー——セランゴールでの蛍鑑賞についてお届けします。
最初に、正直にお伝えしておきます。この記事には、肝心の蛍の写真がほとんどありません。真っ暗な川で群れ飛ぶ蛍は、普通のカメラではまず写らないからです。ですので今回は、私が実際にこの目で見た光景を、できるだけ言葉を尽くしてお伝えする回になります。写真に残せないからこそ、心に深く刻まれた夜のお話です。
※本記事は2017年2月の訪問時点の情報をもとにしています。料金や催行内容などは、旅行前に必ず最新情報をご確認ください。
市内観光を終えた、その日の夜に
機内泊明けで市内観光をこなした2日目。普通ならホテルでゆっくり休みたいところですが、私はこの日の夜、オプショナルツアーに申し込んでいました。料金は8,000円。決して安くはありません。
正直、参加を決めるまでには少し迷いました。疲れているだろうな、とも思いました。それでも申し込んだのは、「蛍を見てみたい」という気持ちが勝ったからです。恥ずかしながら私は、その歳になるまで、蛍を自分の目で見たことが一度もありませんでした。日本でも見そびれてきた蛍を、まさか初めて見るのがマレーシアになるとは。そう思うと、疲れよりも好奇心のほうが上回っていました。
クアラ・セランゴールへ、車で1時間半
夕方、ホテルまで迎えのバスが来てくれました。目指すのは、クアラルンプールから北西へ車で1時間半ほどの場所にある、クアラ・セランゴール。マラッカ海峡へと注ぐセランゴール川の流域で、世界的に知られた蛍の生息地です。
都会のクアラルンプールを離れ、バスは次第にのどかな風景のなかへ。窓の外が少しずつ暗くなっていくのを眺めながら、これから見るであろう光景を想像して、胸が高鳴っていきました。
まずは川沿いのレストランで海鮮の夕食
蛍鑑賞は、あたりが完全に暗くなってから。それまでの時間、まずは腹ごしらえです。連れて行かれたのは、川沿いにある海鮮中華のレストランでした。

印象に残っているのは、貝殻に載って出てきたホタテ。ぷりっとした身に、しょうがや薬味が添えられていて、素材の味を生かした優しい調理でした。海に近い土地ならではの新鮮な海の幸を、中華風の味つけでいただく。旅先で食べる海鮮は、それだけで少し特別な気持ちになります。
この夕食が、蛍への期待をいっそう高める前奏のような時間でした。食事をしながら、同じツアーの参加者の方々と「蛍、たくさん見られるといいですね」なんて言葉を交わして。一人参加でも、こういうささやかな会話が自然と生まれるのが、ツアーのいいところです。
日が暮れて、ファイアフライ・パークへ
夕食を終える頃には、あたりはすっかり夜の色。向かった先は、「ファイアフライ・パーク・リゾート」。その名のとおり、蛍(ファイアフライ)の鑑賞拠点となっている場所です。

入口の看板には、英語やマレー語に混じって、日本語で「ファイアフライ パーク リゾート」の文字も。それだけ多くの日本人が訪れる場所なのだと分かって、少し心強く感じました。
ここで、あたりが十分に暗くなるのを待ちます。蛍は暗くならないと光りません。逸る気持ちを抑えながら、夜のとばりが完全に降りるのを待つ。この「待つ時間」もまた、旅の一部です。
言葉にしかできない、蛍の光の記憶
いよいよ、小舟に乗り込みます。同じボートに乗ったのは、同じツアーの参加者の方々。数人が肩を並べて、エンジンの音とともに、静かに川へと進み出していきます。
川の上は、驚くほどの暗闇でした。街の灯りもなく、聞こえるのはエンジンの低い音と、水を分けて進む音だけ。目が暗さに慣れてくると——見えてきました。川沿いの木々が、光っているのです。
一匹や二匹ではありません。木という木に、無数の蛍が群れて宿り、まるで木そのものが淡く発光しているかのよう。ちらちらと瞬くその光は、まるで夜空の星が、そっと木の枝に舞い降りてきたようでした。見上げる星空が、そのまま目の前の木々に移ってきたかのような光景。誰かがイルミネーションを灯したのではない。すべて、生きものの光。そう思うと、胸の奥がじんと熱くなりました。
私は、声も出ませんでした。「わあ」と歓声を上げるでもなく、ただ静かに、その光に見入っていました。生まれて初めて、自分の目で見る蛍。長いこと見てみたいと思っていた光景が、いま目の前に広がっている。その事実を噛みしめるように、まばたきするのも惜しんで、光の木々を見つめ続けました。
写真に撮ろうとは、思いませんでした。撮れないと分かっていたこともありますが、それ以上に、この光景はカメラのレンズ越しではなく、自分の目に焼きつけておきたいと思ったからです。結果的に、それでよかったと今でも思っています。写真には残っていなくても、あの夜の光は、私の記憶のなかで今もはっきりと瞬いています。
8,000円は高い? 参加して分かったこの夜の価値
正直な話をします。オプショナルツアーの8,000円という料金は、参加前の私には「少し高いかな」と感じる金額でした。
でも、参加し終えた今、はっきり言えます。この夜に、8,000円の価値は十分にありました。いえ、値段では測れない体験だった、というのが本音です。
しかも、これを書くにあたって最近の料金を調べてみて、思わず声が出ました。同じような蛍鑑賞ツアーが、今では当時の倍以上——2万円を超えるものも珍しくないのです。私が参加した頃の8,000円は、今思えばずいぶん恵まれた金額でした。
物価は年々上がっていきます。「いつか行けたら」と思っているうちに、料金も、そして自分の体力も、少しずつ変わっていく。だからこそ、行きたいと思ったときが行きどきなのだと、あらためて感じます。あの夜、迷いながらも参加を決めた自分を、今は少し褒めてあげたい気持ちです。
片道1時間半の移動、海鮮の夕食、そして一生忘れないであろう蛍の光。これらすべてが含まれていることを思えば、むしろ良心的とすら感じます。何より、初めて肉眼で蛍を見るという体験は、お金には替えられません。
こんな方には、ぜひおすすめしたいです。自然の織りなす光景に心を動かされたい方。SNS映えする写真は残らなくとも、自分の心に残る体験を大切にしたい方。そして、私のように「まだ蛍を見たことがない」という方。どうか、迷っているなら参加してみてください。疲れていても、その価値はあります。
ツアーのオプショナルは「割高だから」と敬遠されがちですが、個人では行きにくい場所へ、夜、安全に連れて行ってもらえるのは大きな安心です。特に一人参加なら、なおさら。暗い川辺へ自力で向かうのは、現実的ではありませんからね。
光の余韻を胸に、クアラルンプールへ
蛍鑑賞を終え、バスはふたたびクアラルンプールへ。車内では、まぶたの裏にまだあの光がちらついているようで、しばらく夢見心地でした。ホテルに着いた頃には、すっかり夜も更けていました。
機内泊明けの長い一日。朝は市内観光、夜は蛍。振り返れば、密度の濃すぎる2日目でした。それでも、疲れ以上に「来てよかった」という満足感で胸がいっぱいでした。
さて、次回はいよいよツアー3日目。午前中は、もうひとつのオプショナルツアーに参加します。バティック染めの体験と、KLタワーの展望台へ。そして午後は、世界遺産の街マラッカへと向かいます。
次回、「バティック染め体験とKLタワー展望台」編でお会いしましょう。
シリーズ|マレーシア クアラルンプール・マラッカ 4日間(全6話)
この旅行記は全6話でお届けします。公開が進みしだい、順次リンクを追加していきます。
- 羽田深夜発・機内泊のリアルな過ごし方|JTB旅物語・一人参加
- クアラルンプール市内観光|王宮・国家記念碑・独立広場・ツインタワーを半日で
- 【本記事】セランゴールの蛍鑑賞と海鮮料理の夕食|オプショナルツアー参加レポート
- バティック染め体験とKLタワー展望台|午前半日のオプショナルツアー(近日公開)
- 世界遺産マラッカ観光|オランダ広場・セントポール教会・サンチャゴ砦とニョニャ料理(近日公開)
- マレーシア4日間ツアーの費用と持ち物まとめ|一人参加で失敗しないための全記録(近日公開)


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