2023年5月。
私は、人生で初めてアフリカ大陸へ向かいました。
しかもそれは、コロナ禍を経て4年ぶりとなる海外旅行。
行き先は、ナミビア・南アフリカ・ジンバブエ・ザンビア・ボツワナを巡る、南部アフリカ5カ国周遊9日間のツアーでした。
今振り返っても、この旅は私の中で特別な意味を持っています。
それは単に「初めてのアフリカ」だったからではなく、「もう一度、世界へ踏み出す勇気をくれた旅」だったからです。
なぜアフリカを選んだのか
実は、最初からアフリカを目指していたわけではありません。
コロナ明け初の海外は、ヨルダンへ行くはずでした。
ペトラ遺跡や死海を訪れるツアーを申し込み、久しぶりの海外旅行に向けて気持ちを高めていたのです。
ところが出発1か月前、フライトがキャンセルに。
それに伴いツアー自体も催行中止となってしまいました。
「え…?」と、しばらく現実を受け止められませんでした。
すでに会社の休みは取ってあります。
久しぶりの海外旅行へ向けて気持ちも準備も整えていたのに、突然それが白紙になる。
落ち込みました。でも同時に思ったのです。
――このまま休みを無駄にしたくない。
どこかへ行きたい。
もう一度、世界を見たい。
そうして探し始めたとき、目に飛び込んできたのが「南部アフリカ5カ国周遊」の文字でした。
正直に言えば、アフリカは「いつか行けたらいいな」と思っていた場所。
優先順位はそこまで高くなかったかもしれません。
でも、そのツアーの行程を見た瞬間、心が強く惹きつけられました。
ナミブ砂漠、デッドフレイ観光付き。
白い大地に、黒く立ち枯れた木々。
オレンジ色の砂丘とのコントラスト。
写真やテレビでしか見たことのない、あの異世界のような風景。
「ここに立ってみたい」
その気持ちが、すべてを決めました。
ヨルダンがダメになったのは残念でしたが、もしかしたらあのキャンセルは、私をアフリカへ導くための出来事だったのかもしれません。
4年ぶりの海外。行っても大丈夫?
最後に海外へ行ったのは、ペルーのマチュピチュ。
あれから4年が経っていました。
空港へ向かう道すがら、胸がざわざわしていたのを今でも覚えています。
コロナはまだ完全に終わったわけではない。
ニュースでは海外旅行へ出る人が少しずつ増えていると言っているけれど、本当に行って大丈夫なのだろうか。
私は幸いにも一度もコロナにかかったことがありませんでした。
だからこそ、「もし海外で感染したらどうしよう」という不安が頭をよぎります。
隔離になったら?
帰国できなかったら?
体調を崩したら?
考え出すと、心配は尽きません。
それでも。
不安よりも、「行きたい」という気持ちのほうが強かった。
世界をまた自分の目で見たい。
空港のあの独特の空気を感じたい。
飛行機に乗って、知らない土地へ向かうあの高揚感をもう一度味わいたい。
私は自分に問いかけました。
「怖いからやめるのか、それとも行きたいから進むのか」
答えは、後者でした。
成田空港に立ったとき、胸の奥に広がったのは、懐かしい匂いと高揚感。
「帰ってきた」という感覚に近いものだったかもしれません。
旅は、私にとってやはり特別なものなのだと、改めて実感しました。
少人数だからこそ生まれた、旅の空気
コロナ前の団体ツアーは、40人前後が当たり前でした。
大型バスにぎっしり乗り込み、観光地を巡る。
それもまた楽しい時間でした。
ところが今回のツアーは、参加者わずか12人。
最初は「少ないな」と思いました。
でも、その少人数こそが、この旅をより特別なものにしてくれたのです。
食事のとき、自然と同じテーブルを囲み、会話が生まれる。
移動中も顔と名前が一致し、ちょっとした出来事を共有できる。
ナミブ砂漠で見上げた星空。
ビクトリアの滝の轟音。
チョベ国立公園で出会った象の群れ。
その感動を「すごいですね」とすぐ隣の人と分かち合える。
コロナ明けのツアーは、私がその後参加した旅行も含めて、ほとんどが10数名規模でした。
以前のような大人数ではなくなったぶん、参加者同士の距離はぐっと近くなったように感じます。
そしてもうひとつ、変わったことがあります。
旅行代金。
コロナ前と比べると、1.5倍から2倍近くに上がっていました。
正直に言えば、簡単に「安い」と言える金額ではありません。
それでも参加した人たちは、皆どこか覚悟を決めているように見えました。
「それでも行きたい」
そんな気持ちを持った、本当の旅行好きが集まっている。
だからこそ話も合うし、価値観も近い。
自然と“旅友”と呼べるような出会いも生まれました。
旅は、景色だけでなく、人との出会いも大きな財産なのだと、改めて感じた瞬間でした。
9日間で出会った、地球の原風景
この旅で、私はさまざまな景色に出会いました。
世界最古の砂漠といわれるナミブ砂漠。
デッドフレイの静寂。
空を焦がすような夕日。
吸い込まれそうな満天の星。
テーブルマウンテンの上から見下ろすケープタウンの街。
轟音と水しぶきに包まれたビクトリアの滝。
サファリで目の前に現れた野生の象。
どれもが圧倒的で、言葉を失う瞬間の連続でした。
けれど、それ以上に心に残っているのは、
「私はまた世界に出られた」
という実感です。
不安を抱えながらも一歩踏み出したこと。
キャンセルという出来事をきっかけに、新しい大陸へ向かったこと。
もしヨルダンが予定通り催行されていたら、アフリカへ行くのはもっと先になっていたかもしれません。
人生は、思い通りにいかないこともある。
でも、その先に思いがけない出会いが待っていることもある。
南部アフリカ5カ国周遊9日間。
それは単なる観光旅行ではなく、私にとって「再出発」の旅でした。
次の記事からは、ナミブ砂漠の夕日、デッドフレイの幻想的な景色、ビクトリアフォールズの迫力、そしてチョベ国立公園のサファリ体験を、ひとつひとつ丁寧に綴っていきたいと思います。
あのとき感じた、地球の鼓動のような時間を。
もし、アフリカは遠い、怖い、ハードルが高い――そう思っている方がいたら。
この旅の記録が、そっと背中を押せたら嬉しいです。
世界は、想像しているよりも、ずっと広くて、そして温かいのだから。


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