③ 3日目|ナミブ砂漠編①

ツアー旅行体験談

セスリム・デューン45、赤い砂の夕日へ

朝、カーテンを開けると、ナミビアの空はどこまでも高く澄んでいました。

今日は、いよいよナミブ=ナウクルフト国立公園へ向かいます。
世界最古の砂漠といわれるナミブ砂漠。その名前を聞くだけで、胸が少し高鳴りました。

ウィントフックから国立公園までは、バスでおよそ6時間。
地図で見るとそれほど遠く感じないのに、実際に走ってみると、距離の感覚がまるで違います。

窓の外に広がるのは、どこまでも続く乾いた大地。
木々はまばらで、空の広さが強調される景色。

「アフリカって、本当に広いんだ」

そんな当たり前のことを、あらためて実感しました。


砂漠へ向かう道のり

バスの中では、まだ少し眠気が残っていました。
長距離移動の疲れも完全には抜けていません。

それでも、窓の外をぼんやり眺めているだけで、不思議と飽きない。
何もないように見える景色の中に、時折現れる動物の姿や、小さな集落。

この“何もなさ”こそが、ナミビアの魅力なのかもしれません。

昼食は途中のレストランでいただきました。
意外にもメニューはピザ。

大地のど真ん中で食べるピザは、なんだか不思議な感覚です。

デザートにはチョコレートケーキ。
甘いものが疲れた身体にじんわりと染みわたります。

ここからさらに走り、ついに砂漠の入り口へ。


ソスス・デューン・ロッジへ

この日宿泊するのは「ソスス・デューン・ロッジ」。

何もない場所にぽつんと佇むロッジ。非日常の始まり。

何もない大地の中に、ぽつんと佇む茅葺き屋根のバンガロー。
遠くから見ると、まるで物語の中の世界のようでした。

チェックインを済ませ、荷物を部屋に置きます。

広い敷地に点在するバンガロー。
自然と一体化するような造りで、無駄な装飾はありません。

都会のホテルとはまったく違う空気。

ここに泊まるんだと思うと、少しわくわくしました。


セスリエム・キャニオン

まず向かったのは、セスリエム・キャニオン。

数百万年かけて削られた大地。セスリエム峡谷。

細く切り込まれた渓谷の中を、ゆっくりと歩きます。
岩肌は太陽に照らされてオレンジ色に輝いていました。

数百万年かけて削られた大地。

自然が作り出した造形のスケールに、ただ圧倒されます。

砂漠というと砂丘ばかりを想像していましたが、
こんなダイナミックな渓谷もあるのだと知りました。


デューン45へ

そして、いよいよこの日のハイライト。

デューン45での夕日鑑賞です。

バスを降りると、目の前に広がる赤茶色の砂丘。
太陽の光を浴びて、砂がきらきらと輝いていました。

「きれい…」

思わず声が漏れます。

デューン45は、ナミブ砂漠の中でも特に美しいといわれる砂丘。
なめらかな曲線と、光と影のコントラストが印象的です。

夕日を見るために、砂丘を登ります。

一歩進んで半歩戻る感覚。砂丘登りは想像以上にハード。

見た目以上に急で、足がずぶずぶと砂に埋もれる。

私は途中でマリンシューズに履き替えました。
普通の靴よりも歩きやすく、砂も入りにくい。

それでも、なかなか前に進まない。

コロナ禍の間、運動不足だった私にはかなりきつい登りでした。

一歩進んで、半歩戻るような感覚。
息が上がり、太ももがじわじわと痛くなります。

「もう少し…」

そう自分に言い聞かせながら、ゆっくりと登りました。


赤く染まる砂丘

ようやく砂丘を登りきったものの、太陽はまだ少し高い位置にありました。
私たちはそのまま、砂の上に腰を下ろして、静かに沈むのを待ちました。

足元の砂はまだほんのり温かく、風がときおりやさしく頬をなでていきます。
目の前には、広がる赤茶色の大地と、ゆっくりと傾いていく太陽。

ただ、待つだけの時間。

何かをするわけでもなく、写真を撮り続けるわけでもなく、
ただ座って、空の色が変わっていくのを見つめていました。

登りきった先に待っていた、赤く染まるナミブの夕日。

やがて太陽が地平線に近づくと、砂丘の色が少しずつ深みを帯びていきます。
オレンジ色から赤へ、赤から少し紫がかった影へ。

その変化を、息をのむような静けさの中で見届けました。

登るのは大変でしたが、
この「待つ時間」こそが、いちばん贅沢だったのかもしれません。

誰かが記念に砂を持ち帰っていました。
その気持ちもわかります。

この景色を、何か形として残したくなる。

私は砂を持ち帰りませんでしたが、
この色、この空気、この感覚は、きっと忘れないだろうと思いました。


砂漠の夜

昼間はTシャツに薄手のパーカーで十分でした。
日差しは強いけれど、空気は乾いています。

けれど、日が沈むと一気に気温が下がりました。

砂漠は寒暖差が激しい。
肌寒くなり、慌てて上着を羽織ります。

ロッジへ戻り、ホテルのレストランで夕食。

長い移動と砂丘登りで、身体はすっかり疲れていました。
でも、どこか満たされた気持ち。

食後、ふと空を見上げると——

星が、信じられないほどきれいでした。

街灯もほとんどない砂漠の夜。
無数の星が、空いっぱいに広がっています。

皆で外に出て、しばらく空を見上げました。

「すごい…」
「こんな星、初めて見た」

そんな声があちこちから聞こえます。

そのとき、少しだけ後悔しました。

コロナ禍の断捨離で、一眼レフカメラを手放してしまったこと。

今持っているのはスマホだけ。

この星空を、ちゃんと撮れない。

あのときは軽やかに生きるための決断だったけれど、
この瞬間だけは、少し寂しく感じました。


静かなロッジの夜

ロッジまでの道には明かりがありません。

懐中電灯が必須です。

足元を照らしながら歩く夜道は、少し心細い。
広い敷地に点在するバンガロー。

部屋に一人でいると、外の静けさが逆に強く感じられます。

物音はほとんどない。
風の音だけが、かすかに聞こえる。

シャワーを浴び、ベッドに横になります。

今日は、本当に濃い一日でした。

ウィントフックから6時間の移動。
渓谷ハイキング。
砂丘登り。
そして、赤い夕日と満天の星。

身体はくたくたなのに、心はどこか澄んでいました。

「私は、今、ナミブ砂漠にいる」

その事実が、静かに胸に広がります。

明日は、いよいよデッドフレイへ。

写真でしか見たことのない、あの白と黒の世界が待っています。

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