旅先でふと思った。“日本を出ると気づけること”

旅エッセイ・コラム

はじめに|気づきは、旅の副産物

旅をしているとき、思いがけず「自分の当たり前」が揺らぐ瞬間があります。
美しい景色や異文化の体験ももちろん刺激的ですが、私にとって印象に残るのは、ふとした日常の中にある“気づき”です。

「え?これって日本だけだったの?」
「なんで私はこれにこんなにこだわっていたんだろう?」

そんな小さな驚きや違和感は、いつしか自分の価値観や行動にまで影響を与えてくれました。
今回は、私が海外を旅する中で気づいた、日本では見えなかったものたちをご紹介します。


時間の感覚は、国によってこんなに違う

日本では、「時間に正確であること」は美徳とされています。電車が1分遅れただけで謝罪のアナウンスが流れたり、待ち合わせに遅れそうになると焦ったり…。

でも、海外ではその感覚が少し違うと気づいたのは、東南アジアを旅したときのこと。
10分、15分の遅れは当たり前。ツアーバスが予定時間になっても来ないのに、誰も焦っていないし、怒ってもいない。
最初は不安だった私も、いつしか「まあ、来るでしょ」と思えるようになっていました。

「時間に追われるのではなく、今を楽しむ」。
そんな空気に身を置くことで、私の中の“時間との付き合い方”が少し柔らかくなった気がします。


食事は、ただの栄養補給じゃなかった

ヨーロッパを旅していて何度も驚いたのが、「食事にかける時間の長さ」です。
とくに印象に残っているのはイタリア。ランチで入ったレストランで、前菜からデザートまでコースで頼んだわけでもないのに、食事が終わるまでに2時間近くかかりました。

「遅いな」と思った私の横で、現地の人たちはワイン片手に会話を楽しみながら、ゆったりと時間を過ごしている。
食べるという行為そのものが、人とのつながりを育む“文化の時間”なのだと感じました。

日本では、忙しさから「ランチは10分で済ませる」「ながら食べが当たり前」ということもありますが、あの時間の使い方には豊かさがありました。
食事を急ぐことが美徳ではない国もあるのです。


スーパーのレジで驚いた、あのやりとり

ある国でスーパーマーケットに行ったときのこと。
レジのスタッフが、前のお客さんと世間話をしながら、にこにことレジを通していました。しかもその会話がなかなか終わらない(笑)

「次のお客さんが並んでいるのに、なぜこんなにゆっくり?」

日本では、レジは早く正確に済ませるもの。少しでも列が長くなるとプレッシャーを感じる雰囲気があります。
でもその国では、レジ係とお客さんが「今日暑いね」「それ美味しいの?私も今度買ってみる」と、気軽に声をかけ合いながら買い物を楽しんでいるようでした。

効率よりも、あたたかさ。
スピードよりも、関係性。
たったそれだけのことで、スーパーでの買い物が“心がほっとする時間”になるのだと知りました。


幸せのかたちは、人の数だけある

旅先で出会った人たちの暮らしぶりに、何度も「幸せって何だろう」と考えさせられました。
たとえば、南国でのんびりとビーチで昼寝をしていたおじいさん。
高価な時計もスマホも持っていないけれど、誰よりも穏やかな笑顔を浮かべていたのが印象的でした。

日本では、便利さやモノの豊かさを“幸せ”と考えがちですが、旅をするほどに、それは一つの価値観にすぎないと気づきます。
自然と共に生きること、好きな仕事をしながら家族と時間を過ごすこと、誰かと笑い合える毎日を送ること。
国が変われば、幸せの定義も変わる。
それを知ったことで、自分の暮らし方や選び方も変わっていきました。


一人でも大丈夫、そう思えた日

旅に出始めたころ、私は一人で海外に行くことにすごく不安を感じていました。
言葉は通じるのか、治安は大丈夫か、トラブルに巻き込まれないか…。

でも、実際に出てみると、少しずつ「できた」の積み重ねが増えていきました。
空港からホテルまで無事に移動できた。現地のツアーに申し込めた。困ったときに助けてくれた人がいた。

そうやって旅を重ねるうちに、「あ、大丈夫。私はちゃんと自分で旅できる」と思えるようになったのです。
それは、私にとってとても大きな自信となりました。
一人旅は、世界を知るだけでなく、自分を信じる旅でもあるのだと思います。


おわりに|旅は、心の鏡になる

海外に出るたびに思うのは、「私たちが当たり前だと思っていたことは、世界では当たり前じゃない」ということ。
そして逆に、「世界では当たり前のことが、日本では少し違っていた」ということにも気づきます。

旅は、単に新しい景色を見るだけではなく、自分の心の風景を映し出す“鏡”のような存在。
気づいたこと、感じたこと、驚いたこと。それらはすべて、私の中に少しずつ変化をもたらしてくれました。

これからも、そんなふとした気づきを大切にしながら、旅を続けていきたいと思います。

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