【1】はじめに:未知の国トルクメニスタンへ

ツアー旅行体験談

「99.9%の日本人が行かない国」——そんな紹介をテレビで見たのが、トルクメニスタンという国を初めて意識したきっかけでした。
中央アジアに位置し、カスピ海に面した内陸の国。シルクロードの要衝でありながら、長い間“謎の国”としてベールに包まれてきた存在です。観光情報もほとんどなく、インターネットで調べても出てくるのは「白い大理石の首都アシガバード」や「地獄の門」と呼ばれる燃え続ける巨大クレーターの写真ばかり。

あの地獄の門の映像を初めて見た時、「こんな場所が本当に地球上にあるの?」と衝撃を受けました。夜の砂漠の真ん中で、オレンジ色の炎が地面から噴き出している光景は、まるでSF映画のワンシーンのよう。いつかこの目で見てみたい——そう思いながらも、現地の情報を調べるうちに、ハードルの高さに気持ちが揺れました。

というのも、地獄の門を訪れるには砂漠地帯にテント泊しなければならず、水もトイレもない環境で一夜を過ごすという話。アウトドアやキャンプとはほとんど縁がない私にとって、正直なところ少し躊躇してしまいました。見てみたいけれど、行く勇気が出ない——そんな“憧れ止まり”の国でした。

ところが、運命のようなきっかけが訪れました。
コロナ明けに参加したアフリカツアーで出会った旅仲間から、「トルクメニスタンのツアーがあるけど一緒に行かない?」と誘われたのです。彼女は旅慣れていて、私と同じように世界遺産や少しマニアックな国を巡るのが好きなタイプ。しかも、見つけたツアーはテント泊ではなく、トイレ付きの“ユルタ(遊牧民のゲル型テント)”に泊まれるプラン。
「これなら行けるかも!」と一気に心が動きました。

一人では到底踏み出せなかったであろう旅。でも、信頼できる仲間と一緒なら、未知の国も怖くない。
「こんなチャンスはもうない」と思い、「行きます!」と即答しました。


■ 出発前の準備と手続きは想像以上に大変

トルクメニスタンは、日本人にとってビザが必要な国です。
観光目的でも入国には「査証申請書」「パスポート原本」「顔写真」などが必要で、しかも大使館での手続きがやや特殊。今回はツアーを申し込んだ旅行会社が代行してくれましたが、書類の提出期限がかなりギリギリだったため、出発前は少しバタバタしました。

平日のお昼休みに郵便局へ駆け込み、必要書類を速達で送付。書類不備がないか確認するために何度か旅行会社へ電話するなど、仕事の合間に慌ただしく準備を進めました。
「このまま間に合わなかったらどうしよう…」と少し不安でしたが、出発の数日前に無事ビザが取得できたと連絡が入り、ようやく胸をなで下ろしました。

それにしても、トルクメニスタンはあまり知られていない国ですが、思っていたほど情報が少ないわけではありませんでした。
インターネットで検索すれば、旅行会社のサイトや個人ブログなどもいくつか見つかります。特にツアー会社の説明には、服装の目安や気候、注意点などがしっかり書かれており、準備の参考になりました。

通貨については、旅行会社から「現地では米ドルが便利なので、小額紙幣を多めに用意してください」と案内がありました。トルクメニスタンの通貨はマナトですが、観光客向けの支払いではドルが広く使えるとのこと。両替所やホテルでの両替も可能ですが、クレジットカードが使えない場所も多いため、現金を多めに持っていくようにアドバイスされました。


■ ツアー概要と出発直前の変更

今回参加したのは、某大手旅行会社の「トルクメニスタン周遊9日間」のツアー。
もともとは「デリー観光+トルクメニスタン」の10日間プランとして販売されており、インドからトルクメニスタン入りするルートでした。ところが、出発の3週間ほど前に旅行会社からメールが届き、「デリー〜アシガバード間のフライトが運休になったため、日程を変更させていただきます」とのこと。

その結果、往路がインド経由ではなく北京経由に変更。デリーでの観光はなくなり、北京もトランジットのみで観光はなし。帰国も北京経由のため、全体で10日間→9日間となりました。
旅行代金の変更はなし、キャンセル料はまだ発生しないという案内でした。

インドにはまだ行ったことがなく、せっかくならデリー観光を楽しみにしていたので、この変更は正直ショックでした。同行予定の旅友と「どうする?」と相談した結果、「インドはまた別の機会に行けるけれど、トルクメニスタンはそう簡単に行けない国。今行かないと、次のチャンスはいつになるか分からない」という結論に。
そうして、予定通り参加することを決めました。


■ 日程と訪問ルート

変更後のルートは以下の通りです。
羽田空港から日本航空で北京へ、そこからトルクメニスタン航空に乗り継ぎ、首都アシガバードへ。
現地では専用バスと四輪駆動車を使いながら、以下の都市を巡ります。

訪問地:

  • アシガバード(首都・白い大理石の街)
  • ダルヴァザ(地獄の門)
  • マルイ(メルヴ遺跡)
  • トルクメンバシ(カスピ海沿いの街)

9日間で国の東西を横断する、まさに「中央アジア横断の旅」。
世界遺産メルヴ遺跡やアナウ遺跡、トルクメニスタンの象徴的な白亜の建築群など、見どころが凝縮された日程でした。


■ 出発前の印象と心構え

トルクメニスタンと聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
私の中では「情報が少ない」「インターネットが制限されている」「街が真っ白」といった断片的なイメージしかありませんでした。

実際、現地ではSNSが制限されているため、LINEやInstagramが使えないという話も耳にしました。Wi-Fi環境も不安定で、ツアー中はほぼ“デジタルデトックス状態”になるとのこと。
普段からスマートフォンで地図を見たり、翻訳アプリを使ったりする私にとっては少し不安もありましたが、それもまた未知の国を旅する醍醐味。

また、気候も独特で、5月は日中30度を超える暑さになる一方、砂漠地帯では夜になると10度前後まで冷え込むことも。寒暖差が激しいため、服装の準備も重要でした。
持ち物リストには「日焼け止め」「帽子」「虫よけ」「ウェットティッシュ」「トイレットペーパー」など、普段のツアーよりもアウトドア寄りのアイテムが並びました。


■ いざ、未知の国へ

こうして、出発までの慌ただしい準備を経て迎えた2024年5月18日。
羽田空港第3ターミナルに集合し、いよいよ9日間の「トルクメニスタン周遊の旅」がスタートします。
まだ誰も知らない国、地図の中でずっと遠かった場所。
“99.9%の日本人が行かない国”に、自分が足を踏み入れる日が来るとは——。

次回は、羽田から北京を経由してアシガバードへ向かう1〜2日目の様子をお届けします。
初めてのトルクメニスタン航空、そして夜に到着した白い首都の第一印象とは?

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